仕事をする上で、会社に通うための通勤交通費や、遠方の取引先へ訪問するための出張費は必ず必要になります。これらの会社から支給されたお金を私用に使おうと考える人はいないはず。

しかし、中には通勤定期をプライベートに使用したり、せっかく他県へ出張に行ったのだから、少し寄り道して帰りたいと考える従業員も少なくありません。また、意図的ではないとしても、申請漏れなどにより知らず知らずのうちに通勤交通費の不正受給を受けている人も意外と多いのが現状です。

そこで今回は、通勤交通費や出張費のプライベート利用について注目してみました。ちなみに筆者はとある中小企業の経理部で業務に携わった経験があります。人にはなかなか聞きづらい、通勤交通費のプライベート利用について掘り下げて考えてみましょう。

経理担当
たまに引っ越しなどによる通勤交通費の変更申請が漏れている社員や、出張時に寄り道してしまって正確な精算金額がわからなくなってしまう方がいるの。正しい金額で精算するためには何をすればいいのかしら。

専門家

会社としては正確な金額での精算を実現させたいですよね。この記事ではなぜ通勤交通費や出張費のプライベート利用がダメなのかを初心に戻って紹介しています。不正受給を防ぐ方法も紹介しましたので、ぜひ実践してくださいね。

なぜ正しい通勤交通費の申請が必要なの?

社会人として活躍されている方にとって、ルールを守るのは当然のことと理解されていると思います。

しかし、費用を抑えられるところは抑えたいという心理から「通勤定期の範囲内だから寄り道しよう」「せっかく出張で他県へ行くから観光したい」などと考えてしまうのは、ある意味仕方がないことです。

そもそも正しい通勤交通費を申請しないことにより、どのようなことが起こるのかを確認していきましょう。

横領とみなされる恐れも

正しい通勤交通費の申請がされていないと起こる一番の問題は、税金に関わることです。

そもそも会社が年に1回収支や利益を報告するのは、利益によって納める税金の金額が変わるからです。極端な例ではありますが、以下のような収支報告をした企業があったとします。

  • 売上    :1,000万円
  • 支出(経費):600万円
  • 総利益   :400万円

この場合は利益の約40%を税金として納めるとすると、納税額は160万円(400万円の40%)となります。

しかし、例えばこの会社のある社員が私用で200万円を使い込んで経費として計上していたと仮定します。すると支出金額は600万円から400万円に減少します。

  • 売上    :1,000万円
  • 支出(経費):400万円(※200万円は私用のため経費には含めない)
  • 総利益   :600万円

この場合の納税額は240万円(600万円の40%)になります。つまり、本来240万円の税金を納めなければいけなかったにもかかわらず、160万円しか納税していないこととなり、結果として80万円の脱税をしてしまっている状態です。

これが国税庁などの監査で発覚すると、追加徴収や決算書の修正が必要となるだけでなく、信用問題にも関わります。

交通費の非課税限度額

上で紹介したのはかなり極端な例です。通勤交通費は月々の金額がかなり少額なので、「少しぐらいなら…」という心理に陥りやすい傾向にあります。

通勤交通費に関しては、非課税限度額が設定されています。本来従業員に支払う給与は所得税の対象となるのですが、通勤交通費は会社で働く上で必要なものとみなされており、一定の条件に当てはまる金額は非課税とされています。

つまり非課税の対象額が変わるという事は、従業員本人の所得税額にも関係します。安易な気持ちで申請を怠ると、所得税の追加徴収となる可能性もあるので、必ず正しい金額で申請しましょう。

通勤や出張でプライベートな寄り道をしてもいいの?

例え少額の通勤交通費といえど、正確な金額での申請が重要であるとわかりました。しかし、仕事帰りに途中下車して買い物にいったり、出張の帰り道に飲みにいったりする機会は少なからずあります。

プライベートな寄り道についての見解を紹介します。

通勤定期でプライベートな寄り道は?

通勤定期でのプライベートな寄り道は、区間内であれば特に問題ありません。

その理由として以下の3つが挙げられます。

  • 追加費用の発生がなく、会社に不利益がない
  • 給与とみなされるため、使い道は問われない
  • 休日に定期を使用していても、証拠が残らない

まず大きな理由として、通勤定期の範囲内であれば追加費用がないため、会社にとって不利益が生じないことが挙げられます。

また、通勤交通費に限らず、給与の使い道を会社に報告する義務はありませんね。通勤定期も給与として支給されていると考えると、その使用方法は個人の自由といえます。

ありがちなのが、休日の通勤定期利用です。確かに通勤ではなくプライベートのために通勤定期を利用するのはルール違反のような印象もありますが、それによって会社への損失は無く、休日に定期を使ったか否かは会社では把握できません。

これらの事から通勤定期の範囲内であれば、プライベート利用をしても暗黙の了解で見逃してもらえる可能性が非常に高いのが現状です。

出張でのプライベートな寄り道は?

通勤定期ではなく、イレギュラーな出張に関するプライベートな寄り道はどうでしょうか。

結論としては「会社の規定に準ずる」となります。会社が認める範囲であれば問題ありませんが、それを超える場合は申請または実費負担が必要です。

例えば大阪から東京へ出張となり、せっかくなので最終日に東京ディズニーランドへ行ってから戻ってきたと仮定します。この場合の出張費用と私用の利用の図は以下の通りです。

出張費の私用利用

①に関しては出張費としてみなされますが、②は完全に私用の交通費となります。
問題は③の部分です。この費用をどこまで出張費としてみなしてもらえるかは、会社の規定に準ずることとなります。

  • パターンA:ディズニーランドから大阪までの費用を出張費とみなす
  • パターンB:大阪と東京の往復運賃以外はすべて私用扱いとなる
  • パターンC:すべてプライベート利用とみなし、帰りの運賃は一切支給されない

パターンAは会社側に、パターンCは申請者側にそれぞれ不満が残る結果となります。しかしパターンBは正確な金額が把握しづらいデメリットがあり、どのパターンを選んでも問題が起こりやすいケースと言えます。

こういった問題を少しでも防ぐため、会社で明確な規定を作り、従業員へ周知徹底をしておく必要があります。

不正受給を未然に防ぐための対策3つ!

ここまで読みすすめてくださった方であれば、交通費や出張費の不正受給は起こりやすい問題であることがお判りいただけたと思います。

最後に少しでも不正受給やそれに準ずる問題を防ぐための対策法を3つ紹介します。

対策①環境をかえる

まずは不正受給が起こらない環境づくりをしていきましょう。具体的には以下のようなことが挙げられます。

  • 通勤交通費や出張費の不正受給は「横領」にあたると周知徹底する
  • 不正受給が起こった場合には、厳格な処分の可能性があると周知徹底する
  • 数ヵ月に1度、従業員の住所や通勤方法を確認する
  • 通勤費の申請書類に「変更の場合は再提出が必要」の文言を載せる

不正受給の中には、うっかりミスも多数存在します。少しの工夫で申請を忘れる危険を回避できます。

対策②不正受給を防ぐ仕組みをつくる

従業員の意識改革や明確なルールなどをつくったら、不正受給をできなくするための仕組みづくりにも取り組みましょう。

例えば出張費を事前に申請するルールにすれば、予定外の寄り道が起こった時に差額分を自己負担してもらうことができます。すこし手間になりますが、出張に必要な切符や航空券を会社で購入して渡せば、それ以外の費用は自分で精算するしかなくなります。

また、経費精算システムの導入もおすすめの方法です。申請をオンラインで行う事ができるため、申請者と経理担当者双方の負担が軽減されます。また、システムを利用することで、経理担当者や役員が申請内容をいつでも簡単にチェックできる状況となります。

しっかりと確認している印象を与えることで、不正受給の発生を防ぐことにもつながります。

対策③不正受給が起こってしまったら

もし不正受給が起こったと発覚したら、その後の対策が必要となります。

常習化されていたり、大金の不正受給などの悪意のある不正受給は、会社から従業員へ返還請求をします。返還方法は従業員と相談し、現金または給与や退職金からの相殺となります。

従業員の不正ではありますが、勝手に給与などから相殺するのは違反となりますので注意しましょう。

逆に「通勤方法を変えたが申請を忘れていた」「何らかの理由で短期間の引っ越しだったため、会社への申請は不要だと思っていた」などの悪意のない不正受給の場合は、発覚した時点で指導を行い、以降気を付けてもらうという対応になる場合がほとんどです。

まとめ

通勤交通費や出張費のプライベート利用は非常に起こりやすい問題です。しかし、中には不正受給や横領に繋がるケースもあるので注意が必要です。

不正受給が起こると経理担当者のチェックや返還請求などの手間も非常に多くなります。また、明確な規定を定めていないと従業員ともめる原因にもなりかねません。

今回紹介した内容を元に、通勤交通費のプライベート利用に関する意識を深めましょう。

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