会社が支払う給与には、交通費として通勤手当が含まれています。しかしこの交通費を申請する際に嘘の申告をして不正に通勤手当を受給されることもあり、経理担当者が頭を悩まされることも実はよくあることです。

今回は、以前勤務していた会社で経理を担当し就業業規則・旅費規程の作成から携わった13年の経験を踏まえ、どうしたら不正受給を防ぐことができるのか、また正しい通勤手当の手続・支給を行う為にはどうしたらよいかを、非課税限度額の基本を説明しながらメリットデメリットも含めてご紹介します。

交通費の非課税限度額とは?

交通費は、給与に含まれる通勤手当と出張などによる旅費交通費とに分けられます。

会社が従業員に支払う給与は所得税の対象となりますが、給与所得すべてが所得税の対象となる訳ではなく、その中の通勤手当には一定の限度額まで所得税がかかりません。これを非課税限度額と言います。

非課税となる交通費の条件とは

社員が通勤手当を支給される場合の非課税となる限度額には、下記の条件が挙げられます。

  1. 電車やバスなどの公共交通機関(又は有料道路)を利用した場合
  2. 交通用具(自転車や自動車など)を使用した場合
  3. 通勤用定期乗車券を支給する場合
  4. 交通機関(又は有料道路)と交通用具を利用する通勤手当や通勤用定期乗車券

交通費の非課税限度額が15万円に引き上げ

交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券のほか、交通用具を使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券は、平成27年12月31日以前の非課税限度額は10万円が最高限度でした。

しかし平成28年度の税制改正によって、平成28年1月1日以降の非課税限度額は15万円に引き上げられました

自動車や自転車の場合の非課税限度額

自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当は、通勤距離に応じて非課税限度額が設定されています。

課税されない1か月当たりの合理的な運賃等の額は下記の通りです。

・通勤距離が片道55キロメートル以上である場合   31,600円
・通勤距離が片道45キロメートル以上55キロメ
-トル未満である場合               28,000円
・通勤距離が片道35キロメートル以上45キロメ
-トル未満である場合               24,400円
・通勤距離が片道25キロメートル以上35キロメ
-トル未満である場合               18,700円
・通勤距離が片道15キロメートル以上25キロメ
-トル未満である場合               12,900円
・通勤距離が片道10キロメートル以上15キロメ
-トル未満である場合               7,100円
・通勤距離が片道2キロメートル以上10キロメ
-トル未満である場合               4,200円
・通勤距離が片道2キロメートル未満である場合    全額課税

合理的な運賃等とは、「最も短い時間」での運賃等を表しています

交通費が課税対象になることもある

交通費が非課税限度額を超えている場合は当然課税の対象となりますが、交通機関を利用し合理的な運賃等の額が基準を満たしている場合でも非課税の対象とならない場合もあります。

例えば派遣で働く人が交通費という名目で支給されず時給に含まれている場合や、交通費が給与に含まれて支給された場合には、全額所得税の課税対象となるので確認しておくことが大切です。

通勤手当を払うのは義務じゃない?

通勤手当の支給は、労働基準法では支給に関する規定は定められていません。つまり通勤に関わる費用を会社が負担しなければならないという法律上の義務はなく、会社の任意になります。

その為仮に通勤手当の支給を会社側がされなかった場合でも特に法律上の罰則もなく、支給金額の上限も会社側が設定することが可能です。

通勤手当の支給は会社の裁量

通勤手当の支給は会社側の任意によるものなので、通勤手当を支払うか支払わないかは会社の裁量で決めることができます。

本来通勤に関わる費用は自己負担が原則となっており、会社側が通勤手当を支払わなくてもよいわけですが、人材確保などの理由から給与規定や就業規則などに明記し通勤手当を支給されている場合が一般的です。

通勤手当は非課税限度額を基準にしていることが多い

通勤手当の支給は会社側の任意によるものなので、給与規定や就業規則などに定められている場合がほとんどです。

支給される通勤手当の金額は、非課税限度額を基準として設定している会社が多く、経理担当者が非課税限度額を確認する手間を省くという理由もあるでしょう。

交通費の不正受給の対処法は?

交通費には通勤手当と出張などによる旅費交通費がありますが、虚偽の届出や申請により不正に受給されることも少なくありません。

ではどのような不正受給があり、どうすれば対処することができるのかを考えていきましょう。

実は多い交通費の不正受給

交通費の不正受給には通勤手当によるものが圧倒的に多く見られ、それにより頭を悩ませている会社も多いと思います。

不正受給の疑いがあれば経理担当者は申請された通勤手当が適切なものかどうかを確認する作業や、仮に不正受給があった場合には社員が不正に受給されていた金額を調査する為に多くの時間と作業を費やさねばなりません。

また調査により不正受給が判明した場合には懲戒処分などの対象にもなる為、会社にとっても大変なダメージを受けることになります。

不正受給を防ぐ3つの方法

不正受給が判明されれば裁判にまでおよぶ場合もあり、不正受給を行った社員だけではなく会社にとっても大きなマイナスにもなります。その為には、不正受給されないように充分な対処を考えておかなければなりません

では不正受給されてしまった場合や、不正受給をされない為にはどのような対処法があるのかをご案内していきます。

①悪意ある不正受給に対して

不正受給に悪意があると判断される場合には、会社は社員に対して全額返還請求や懲戒処分も検討します。

また会社から強制的に給与等との相殺をすることは労働基準法に違反しますが、社員が同意している場合には給与や退職金から相殺することも可能です。

②悪意のない不正受給に対して

悪意のない不正受給とは、たとえば引越をしたが会社への報告を怠っていた場合や、健康の為電車通勤から徒歩通勤へと変えていたというような場合が挙げられます。

この場合は不正受給されていた金額の返還はされずに、厳重注意や訓告で済む場合も考えられます。またその際には正しい申請書類の提出をさせることも忘れないようにしましょう。

③不正受給させない意識改革と仕組作り

不正受給させない為には、社員へ「不正受給」であるということの周知が必要です。

その為には就業規則や給与規定などで周知案内をすることや、申請時の通勤経路又は通勤定期代のコピー等により、その申請が正当なものかどうかをしっかりとチェックし、不正受給されない為の体制を整えておく仕組み作りをしておかなければなりません。

不正受給対処による3つのメリット

会社にとっても社員にとっても不正受給の対処法を考えておくことはとても大きなメリットがあります。3つ挙げてみましたのでご覧ください。

メリット①会社の損害を防止する

社員が通勤手当の不正受給をしていた場合、会社では本来支給しなくてもよい金額までもが支給されてしまいます。また不正受給が判明されれば裁判に発展することも考えられ、その費用も発生し大きな損害にもなりかねません。

日頃より不正受給に対してしっかりと対処していることによりこれらの損害を防ぐこともでき会社の損失を無くすことでメリットがあります。

メリット②経理担当者の作業を軽減

社員が通勤手当や旅費交通費の精算で不正受給した場合、遡って確認するための作業は経理担当者にとって大きな負担と時間を必要とします。

不正受給を対処していることにより経理担当者が調査することもなくなる為、作業や時間を削減することが可能です。

メリット③社員に対しての懲戒を未然に防ぐ

社員が会社へ虚偽の申告し不当に通勤手当や出張などによる旅費交通費を受け取り、その事実が発覚した場合懲戒解雇という最悪の結果になってしまうことも考えられます。またその申告が悪質と認められた場合、不正受給をしていた金額も返還請求されることもあります。

不正受給の対処をし社員に周知させることで不正受給を防止でき、懲戒などの処分がされることを未然に防ぐことが可能です。

不正受給対処をしなかった場合の3つのデメリット

社員が届出をした内容を疑うことは、誰もがしたくないと思うのは本当のところでしょう。しかし申請をされた内容を確認もせず全て信用し、後から不正受給が分かれば会社に大きなリスクが生じてきますし、双方にとっても後味の悪いものになってしまいます。

では不正受給の対処をしていなかった場合どのようなデメリットがあるのか3つ挙げてみました。

デメリット①会社に大きな損害が発生

社員が虚偽の申告をして不正受給を行っていた場合、本来支給する必要がなかった金額が支払われていたことにより、会社にとって大きな損害が生じます。また申請が悪意のある場合や被害にあった金額が多額であれば、裁判にまで発展するケースも考えられそれに伴う費用も発生します。

会社に大きな損害を与えるということは、不正受給対処をしていなかった為のデメリットと言えるでしょう。

デメリット②経理担当者への作業の負担

社員の不正受給が発覚した場合、経理担当者は遡って調査をしなければならず多くの時間と作業を要します。また長期に渡って不正受給がされていたとなれば、経理担当者の作業の負担も大きくなり残業することにもなりかねません。

不正受給の対処をしていなかったことにより未然に防止することができなかった為、経理担当者の作業の負担が増してしまうというデメリットになります。

デメリット③会社と社員の双方への後味の悪さ

社員の不正受給が発覚した場合、会社と社員の双方の言い分の違いから裁判で争うことも考えられます。また会社からの懲戒処分に対して社員が不服申し立てを行う場合もあり、裁判が長期に及ぶケースもあります。

不正受給の対処をしていなかったことにより、会社と社員に認識のずれが生じて裁判に発展することは、双方にとっても後味の悪い結果となりデメリットと言えるでしょう。

まとめ

社員が通勤手当の申請をする際、間違っている場合はどこの会社でもよくあることだと思います。しかし申請の間違いが悪意のある場合と忘れていた場合などでは、対処の仕方も大きく違ってきます。

大切なのは、会社側が不正受給をされないように就業規則や給与規定などで社員に周知させ、未然に防止して不正受給をされない為の体制をしっかり整えていくことではないでしょうか。

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