出張経費

経費精算をするうえで、出張旅費の精算業務は領収書の確認など細かなチェックが必要で時間を取られます。出張旅費規程を定めて定額支給している会社もありますが、その額はどのように決まっているのでしょうか。役職や出張エリアなど細かく定めている会社もあれば、役員以外は全社員・全国一律の定額支給という会社もあります。出張旅費規程は自由に決めて問題ないのでしょうか。

出張旅費規程は会社ごとに決めることができますが、内容が適正でない場合は税務署の調査で損金として認められない場合があります。しかし適正に規程を定めることにより、支給される社員の所得税も非課税で、会社としても損金にできますから節税効果があります。

出張旅費規程に定めてあるからといっても、出張旅費がなんでも認められるわけではありません。国税庁サイトでは非課税となる旅費の範囲を「役員及び使用人のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたもので、同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるもの」としています。

ちなみに筆者である私は大手企業の管理部門で20年以上働き、経理部と人事部を経験して出張旅費規程の改定業務に携わってきました。在職中に何度となく税務調査も経験しましたが、出張旅費規程の内容が不適切との指導を受けたことはありませんし、損金算入を認められなかった経験もありません。どのような根拠で出張旅費規程の定額支給の金額を定めてきたのかポイントをご紹介します。

経理課
出張旅費の宿泊費や日当は領収書なしで精算しているけどいいのかな?他の精算は必ず領収書を確認するよう先輩に言われるけど、なぜ出張費だけ領収書なしでいいの?・・・そもそも、精算する金額はどうやって決めているの?
専門家
会社に出張旅費規程があるんじゃないかな?出張旅費規程に宿泊費や日当、食事代が適正に定められていれば、領収書がなくても、その規程を根拠にして定額支給するのは問題ないんだよ。税務署も認めてくれるよ。

出張旅費とは

出張旅費とは会社の業務で通常の勤務地以外の場所へ移動するための旅費です。交通費は通常の勤務地を拠点に客先訪問などのために移動した交通費ですが、出張旅費は別の支店へ行きそこを拠点に移動した交通費と考えるとイメージしやすいです。

出張旅費は出張先によりかかる費用が違いますから定額支給することはありません。領収書をもとに実費精算するのが基本です。

遠方へ行く場合は、事前に概算額を仮払いすることもあります。仮払いする場合は、出張後に実費で精算します。仮払いと精算の仕訳は次のようになります。

【仮払い時の仕訳】

借方科目 金 額 貸方科目 金 額
仮払旅費 50,000 現 金 50,000

【精算時に仮払いが多かった場合の仕訳】

借方科目 金 額 貸方科目 金 額
旅費交通費 45,000 仮払旅費 50,000
現金(返金) 5,000

【仮払い以上の旅費を精算する場合の仕訳】

借方科目 金 額 貸方科目 金 額
旅費交通費 60,000 仮払旅費 50,000
現 金 10,000

出張経費とは出張に係る宿泊料や日当、食事代

出張経費は宿泊料や日当、食事代などです。出張経費については規程で明確に定めがあるか否かで精算方法や扱いがかわってきます。

規程がない場合:宿泊費は領収書を根拠に精算します。日当や食事代は給与として扱います。
規程がある場合:宿泊料は規程を根拠に精算できるため領収書は不要です。日当や食事代も出張経費として処理できます。

どちらの場合も出張した根拠を残すために出張報告書を作成して出張費精算書に添付しておきましょう。税務調査では精算金額よりも、架空計上を疑われ、実際に出張した事実を確認されることがあるからです。

出張旅費と出張経費の違いは

出張費には出張旅費と出張経費があります。混同しがちですが、それぞれ含まれる費用が違います。会社によりルールや細かな線引きは違うと思いますが、一般的には次のように認識されていることが多いと思います。

出張旅費:出張にかかった公共交通機関の料金・高速利用料・駐車場代など
出張経費:宿泊料・日当・食事代などです。出張旅費規程がある場合とない場合で精算方法や所得税の扱いがかわってきます。

日当や出張経費の支給義務は?出張経費のメリットは?

出張中の日当や出張経費の支払いは会社が任意で定めるもので、法律上は支給が義務づけられているわけではありません。しかし出張経費を支給することは会社と社員の双方にメリットがあります。

【会社側のメリット】
出張経費は非課税扱いのため支給額全額が経費となり損金計上できます。それにより法人税・消費税・住民税が安くなります。
適正な金額を設定していれば税務調査でも問題ありません。仮に税率が約48%とすると、年間で出張経費として300万円を損金計上した場合は144万円の節税になります。

【社員側のメリット】
出張旅費規程に定められた日当や食事代には所得税・住民税が課税されません。仮に所得税10%の人が日当を年間20万円受け取っていれば2万円の節税となります。
規程に定められていない場合は給与として扱われますから所得税・住民税を2万円納付することになります。

出張中の経費はどこまで認められる?勘定科目ごとに注意点を解説

出張経費はどこまで認められるのでしょうか?経理担当者なら判断に迷う領収書がまわってきた経験があるのではないでしょうか。この章では具体的な例をあげて経費をして認められるものをご説明します。

交通費:新幹線や飛行機などの交通費は旅費交通費として認められます。ただし合理的な手段である場合であって理由なくタクシーで移動するなどは対象外です。税務調査で経費として認められないことがあります。単身赴任の帰省旅費と一部区間が被る場合は別々に精算します。帰省旅費は給与として扱うからです。

宿泊費:宿泊にかかる費用は実費または規程がある場合の定額支給が認められます。ただし朝食付きプランで食事代込みとなっている場合は注意が必要です。食事代が規程に定められていければ、純粋な宿泊費のみしか経費として認められない場合があります。領収書を宿泊費と食事代に分けてもらうなどの対応が必要です。

食事代:社員の昼食などの食事代は規程がある場合のみ定額支給額が経費として認められます。規程がなければ通常の食事は出張のため発生しているわけではないので自腹です。

日当:規程に定められている場合のみ経費として認められます。規程がないと給与となります。税務調査で不当に高い日当と判断されると給与扱いとなりますので適正な金額を設定するよう必要があります。

会議費:取引先や社内での打ち合わせのお茶代は1人5,000円まで、ビール1本くらいまでなら会議費として認められます。

交際費:取引先や社内の親睦目的の食事は交際費として認められます。取引先が帰宅する時のタクシー代を負担したものも交際費です。

このように出張旅費規程を定めて運用していないと経費にできないものがあります。

出張経費は出張旅費規程を定めて運用しよう

出張経費の精算を考えた場合、出張旅費規程を定めて運用したほうが精算業務の負担は軽くなります。出張した社員は領収書の管理が不要ですし、経理担当はチェック作業が省略できるからです。

ただ税務調査で出張経費として認めてもらうには、出張旅費規程を適正に定めなければなりません出張旅費規程を制定する時に一番悩むのは宿泊費や日当、食事代の金額です。適正価格と認められる前提として(1)(2)をクリアしなければなりません。

(1)全社員を通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたもの
(2)同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるもの
特に(2)は他社の規程を知ることが難しいので経理担当者としては頭をかかえてしまいます。

この適正価格は労務の範疇で産労総合研究所が発刊している「労務事情」という人事労務の専門誌が3年に一度のペースで調査をしています。直近は2019年11月に2回にわけて「国内・海外出張旅費に関する調査」の結果を発表しています。

会社の権限規程によると思いますが、一般的に規程改定は稟議書で起案して申請し、取締役会の承認を得て進みます。私の経験では稟議書に添付する客観的な根拠資料として、この調査の数字を使っていました。この記事でも、その調査結果をもとにご説明します。

労務事情

参考文献:産労総合研究所|専門誌「労務事情」

出張旅費規程を作成する3つのポイント

ポイント①:目的と範囲を定める

出張旅費規程を作成する場合は最初に目的と範囲を定めます。出張旅費規程は特定の役員や一部の役職社員だけを対象としたものは認められません。宿泊費は役職に関係なく発生しますし、日当は出張中はみなし勤務となり残業代がつかないための慰労の意味もありますから全社員に適用するのが前提です。

例をあげると次のようになります。
目的:役員または社員が社命により出張する場合の旅費およびその手続きに関して定める
範囲:役員を含むすべての社員に対して適用する

役員旅費規程や契約社員旅費規程など社員身分別に規程を定めることも可能です。また、役職や階級別に金額を設定することは問題ありません。一般的に役員と一般社員の宿泊費が同額なことはありません。

調査結果でも、国内全地域一律の宿泊料の平均は社長14,095円、部長9,835円、一般社員8,605円となっており、役職ごとに支給額が設定されているのがわかります。

ポイント②:国内出張の日当・食事代はどう決める?相場は

国内の日当と食事代について、支給状況や相場金額を確認していきます。日当については支給する条件を決めている会社が多いようです。また、食事代は日当や宿泊費に含むとする会社が多く、単体で支給している会社は少ないのが現状です。

日当

日帰り出張に日当を支給する会社は84.2%で、一定の条件を超えた場合に支給する会社が44.4%です。また、条件は距離や所要時間を基準としており、距離では片道100kmが46.7%、往復300km以上が40.0%です。所要時間では往復6時間以上が41.7%、片道1時間以上が33.3%となっています。また、早朝出発および深夜帰着でも7割以上が日当を加算せずとしています。長期出張の場合に日当の減額規程を定めている会社が25.1%もありました。

【日当の平均支給額】

条件や基準 社 長 部 長 一般社員
日帰り日当(距離による区分なし) 4,458 2,666 2,094
日帰り日当(距離等による区分あり:最高) 4,614 3,025 2,593
日帰り日当(距離等による区分あり:最低) 2,526 1,567 1,334
宿泊日当(全地域一律) 4,598 2,900 2,355

引用:産労総合研究所「労務事情」2019年11月1日号

食事代

食事代については日帰り出張では28.7%、宿泊出張でも31.0%の会社が日当に含むとしています。日当とは別に食事代を支給する会社は1割に満たない状況です。

ただし、建設関係の会社では工期のあいだ中、ずっと出張ということもあります。そして健康は工事の安全も左右する問題。その場合は食事代を支給する会社も少なくありません。

【食事代の平均支給額】

条件や基準 社 長 部 長 一般社員
日帰り出張食事代(朝食) 860 700 686
日帰り出張食事代(昼食) 1,067 882 827
日帰り出張食事代(夕食) 1,463 1,240 1,170
宿泊出張食事代(朝食) 867 742 733
宿泊出張食事代(昼食) 1,267 1,022 956
宿泊出張食事代(夕食) 1,527 1,347 1,307

引用:産労総合研究所「労務事情」2019年11月1日号

ポイント③:海外出張の日当・食事代はどう決める?相場は

海外出張の日当と食事代については6割近くが円建てで支給しています。支給状況や相場金額について円建て金額を確認していきます。

日当については出張地域で支給する金額を決めている会社が多く、食事代は日当や宿泊費に含み、すべてを滞在費としている会社が多いのが現状です。海外出張特有の支度料を部長クラスで5万円程度、規程に盛り込んでいる会社も4割近くあります。

【日当の平均支給額】

出張地域 社 長 部 長 一般社員
韓国・台湾地域 6,476 5,243 4,559
中国地域 6,411 5,185 4,514
東南アジア地域 6,472 5,226 4,543
北米地域 6,855 5,593 4,913

引用:産労総合研究所「労務事情」2019年11月15日号

【食事代の平均支給額】

出張地域 社 長 部 長 一般社員
韓国・台湾地域 5,044 4,658 4,408
中国地域 5,044 4,658 4,408
東南アジア地域 5,044 4,658 4,408
北米地域 5,544 5,264 4,991

引用:産労総合研究所「労務事情」2019年11月15日号

海外出張のレート計算については下記記事もご参考ください。

出張経費にかかる税金はどうなる?

出張旅費や出張経費にかかる税金はどうなるのでしょうか。出張旅費は実費精算が基本で通常の交通費と同様に社員が立て替えた会社の経費を、領収書を根拠に精算しているだけなので所得税はかかりません。

出張経費も会社の経費として精算することにかわりませんが、出張旅費規程がある場合とない場合で受けとった社員の課税関係が違ってきますので注意が必要です。

規程がない場合:日当や食事代は給与とみなされ、所得税と住民税が課税されます
規程がある場合:日当や食事代は会社の経費とされ、所得税と住民税は課税されません

会社側の税金については、規程を根拠にした定額支給も実費支給も一般的に妥当とされる適正価格であれば損金算入できますしかし明らかに高額なものは認められず、結果として法人税を多く支払うことになります。役職別に支給額を設定している場合は、該当する金額以上を誤って支払うことのないように注意しましょう。

まとめ

出張費の精算業務は、出張の多い会社にとっては大きな作業ボリュームとなります。出張旅費規程を制定して宿泊費や日当、食事代を適正価格で決めてしまえば精算時の領収書のチェックなどの負担が軽減できます。

それでも役職別に金額を設定していれば、精算する社員ごとに日当や食事代を確認しなければなりません。可能であれば出張旅費精算ソフトの導入を検討してみてはどうでしょうか。はじめに出張旅費規程の内容を設定してしまえば、該当する役職の日当などの金額を自動で精算できるものもありますよ。

下記記事をご参考ください。

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